転職する人の円満退職マニュアル/事前準備~退職当日まで/本当の転職成功

円満退職

円満退職は転職する者が「跡を濁さない」で、心機一転、新しいことにチャレンジするために最低限守るべきマナーです。退職する場合、どのタイミングで誰に相談するか、退職理由をどんな風に言えばいいかなど自分だけで考えてしまうことがあります。

転職するなら、今の会社に迷惑を掛けないように、万全の事前準備をしてから行動を起こすことが円満退職には欠かせません。

円満退職マニュアルには、円満退職して本当の意味での転職成功ができるよう、退職を相談する前から会社を辞めた後まで、一緒に働いてきた人たちとの関係を大切にする退職方法を解説しています。

退職するときは円満退職が社会人のマナー

退職するから手続きをお願いします!もう自分には関係ないので!なんていう風に考える人は、社会人としてマナー違反ですよね。退職する原因がネガティブだと、円満退職なんか考えないで、バックレる勢いで辞めることは確かにあるでしょう。

ただし、どんな場合においても、人には最低限の礼儀というものがあります。

組織に差支えのないよう退職することは社会人として必要です。「辞める自分には関係ない」という気持ちでないがしろにしてしまうと、今までお世話になった会社にかかる迷惑は想像より多きいものです。

急に退職を申し出てしまうと、部署の業務の引継ぎに支障が出るだけでなく、人員配置等の人事関連手続きなど他部署を巻き込んで迷惑をかけてしまいますので要注意。退職するには、円満退職を心がけて転職を成功させましょう。

退職の事前準備は成功のカギ

転職をする時、スマートに円満退職できることが社会人にとって重要です。転職の場合は同じ業界で悪い噂がたつと自分の首を締めることになります。転職する時は、周りに迷惑をかけずに退職するように事前準備をする事が成功のカギを握ります。

  1. 転職先からの内定をもらってから退職の意思表示をする
  2. 意思表示の申し出は余裕をもって1ヶ月~2ヶ月前を目安にする
  3. 退職の意思表示は必要な人物(上司等)から述べる
  4. 退職時に「受け取るもの」「返却するもの」を明確にしチェックリストを作成
  5. 業務引継ぎを完璧に、その後身辺整理と挨拶

【注意点】円満退職を実現するための準備に集中しすぎて、転職先探しに時間を割けないまま、無職の期間(空白の期間ともいう)が発生する人がいます。退職を決意した段階で次の職探しを忘れないようにしてください。

退職の意思表示と退職日の相談

退職する意思表示は「内定後に余裕をもって」申し出ましょう。もし内定前に意思表示してしまい、転職できなかったら職場には居づらくなり迷惑をかけます。また、先に後輩や同僚に退社の旨を述べてしまうと、噂が広まり間接的に上司に退社の意思表示が届きかねません。

どんな状況で辞めるかにもよりますが、社会人として大変失礼な行為ですので、まずは直属の上司にだけ事前の相談はしておきましょう。

そして、内定先では1ヶ月以上は余裕をもち、まずは内定確定後に上司と相談して退社日を明確にしましょう。民法上は意思表示から2週間以上であれば退職できますが、引継ぎや諸々の手続きを考えれば意思表示は退職の1ヶ月~2か月前を目安にするといいです。

ただし1ヶ月~2か月前は目安であるため、業務が多い方や引継ぎ者との連携に時間がかかる場合もあります。自分の都合だけでスケジュール調整をするのだけは避けましょう。

【注意点】上司への相談後、あなたが退職した後に業務を担う人がいない場合、採用と教育が完了するまで辞めさせてもらえないケースがあります。そのような場合は、円満退職を優先させるか否かは、ご自身の精神面などにも配慮しながら相手とよく話し合って決めましょう。

業務引き継ぎ

業務の引継ぎでは、「自分のやっていた業務の作業手順」を教えるだけでは意味がありません。引継ぎでは次のようなことを意識する必要があります。

  • 引継ぎ事項を明確に共有しておく
  • マニュアルの見直し(課題点や注意点も明確にしておく)
  • 引継ぎ者が一人で作業できるようになること
  • 引継ぎ者が「自分と同等の質で結果を出せる」ようになること
  • 継続中案件の進捗と納期

自分がやっていた業務に一番詳しいのは本人です。だからこそ「当たり前」と思っているような注意点や工夫点でも引継ぎ者にとっては必要な情報です。上記を意識して「しっかりアウトプットが出せる段階」までを目標に引継ぎを行いましょう。

【アドバイス】細やかな引き継ぎのために、後任者へのヒアリング時間は多く持つようにしましょう。転職後、新しい仕事を教わっているときに、前職からの電話が鳴り響いてしまうことになれば、転職先の会社や同僚に迷惑がかかってしまい本当の意味での円満退職ではなくなってしまいます。

身の回りの整理と清掃

退職するときは毎日使っているデスク周りや共有スペースの私物など今一度チェックしましょう。整理は単に「片づける」のではありません。「どんな物をどこに保管するのか」を他の社員が分かるようにしなければなりません。

自分が作成した書類の山をどこかに置きさえすれば見た目上は整理されていますが、「内容が整理」されているわけではありません。どんな内容の書類がどこにあるのか明確に整理しておくことが「退職時の整理」です。

当たり前ですが清掃もきっちりしましょう。自分では気にならない汚れも、人によっては不快なものです。そんな汚れを上司や後輩などに清掃させるのは大変非常識な行為ですので、「最後の垢落とし」と思ってピカピカにしていきましょう。そうすることが自分にとっても部署内の人間にとっても気持ちの良い退職となります。

お世話になった人への挨拶

お世話になった人の挨拶ですが、一般的には「最終出社日に最後の挨拶」として一人ずつ回っていってお礼を言います。大事なのは「お世話になったお礼を必ず述べること」です。「退職しますけど、先輩も頑張ってください!また会いましょう」などの軽い挨拶はNGです(送別会の場の雑談でしましょう)。最後のビジネス挨拶の場です、誠意をもって感謝を述べましょう。

また、出張が多く会えない人や部署は違うがお世話になった人のことも考慮して、メールでも送付するのが望ましいです。これは約1週間前からで問題ありません。メールの場合は以下のポイントを押さえましょう。

  • 冒頭あいさつ
  • 退職期日や勤続年数
  • お世話になったお礼を述べる
  • 転職先での仕事内容や抱負
  • 今後の活躍を祈る旨の記載

あなたが退職した後、「あの人…どうしてるかなー」「ちゃんと辞めていってくれたね」「最後のメッセージ、感動したよ」などといった会話が少しでも起こるように意識するのもコツです。

円満退職マニュアル1:意思表示の注意事項

円満退職する上で、意思表示をしないことには何も始まりません。そこで、最も注意すべきことは退職までの流れを明確にしてから申し出ることです。

ここを曖昧にしてしまうと、上司に言うタイミングも、退職するタイミングも、そして「引継ぎのタイミング」だって調整がきかなくなるリスクが高まります。転職先にも迷惑を掛けかねません。きちんと意思表示前後の「流れ」を明確にしてから申し出ましょう。

退職日は上司と相談

いざ転職先が決まったら、退社日についてを上司と事前相談するのは「必須」です。

きちんと口頭で相談することは大前提ですが、内容を残しておくために、相談後改めて決定事項をメールでも残しておきましょう。つい身近な後輩や同僚に話して色々な引継ぎを空き時間でやっておきたい気持ちは分かりますが、本来社員の去就は機密事項です。

直属の上司に、公私のケジメをつけて事務的かつ効率的な退職日の相談をしましょう。

上司との相談は、退職日をいつにすればいいのかという丸投げの相談ではなく、きちんと自分の業務量や進捗など資料を準備してスムーズに決定できる状態を作ってから相談に伺うようにすれば、上司への負担も少なく好ましいです。この時に併せて「返却物」や「受取物」も分かる範囲で明確にしておくとその後の退職準備もスムーズに進みます。

退職の意思表示は直属の上司から

退職の意思表示の順番ですが、社長や労務、人事などではなく、まずは直属の上司に申し出ましょう。
部下の退職を労務などに伝えるのも上司の仕事であり、この順番が逆になると事態がこじれてしまう可能性もあります。まずは貴方自身を管理している直属上司に退職の意思を述べ、それから今後の部署の動きを見つつ退職までのスケジュールを一緒に考えていきます。

職場の同僚や先輩が今持っている案件や作業量など、全体像を把握しているのは上司ですので、まずは係員内で相談するのではなく上司に意思表示することを覚えておきましょう。

円満退職マニュアル2:退職願の書き方

退職願に書き方の明確なルールはありませんが、一般的なテンプレートやフォーマットは書籍やインターネット上で入手可能ですので、その体裁に沿って書いていきましょう。また、会社によっては退職の申し入れに関する書類を統一書式として準備していることもあるので確認しておきましょう。

ルールはなくとも、「必要事項」が抜けているような文章になると「退職願」の意思を汲み取ってもらえない可能性もあるため、必ず自社の過去のものを参考にするか、書籍やフォーマットで確認しながら記入しましょう。

封筒の書き方

退職願は封筒に入れて上司へ手渡しするのが基本です。使用する筆記用具は黒色のボールペンが無難で、細すぎるペン先は見づらいため避けましょう。まず封筒の表面中央に縦書きで「退職願」と大きく記載します。そして裏面の左下の部分に、ご自身の所属部署、氏名をそれぞれ縦書きするのが一般的です。所属部署を右、その左に氏名を書くようにしましょう。

例えば、封入する書類が横書きであったとしても、封筒表面と裏面は縦書きにするのが一般的ですので注意しましょう。

退職願の書き方

退職願は「退職したいです」と打診する書類です。これを明確に伝えることが目的となる書類であるため、「〇月△日に労働契約を解除したい」と明確に書きましょう。前述したよう退職願に明確なルールはなく各フォーマットやテンプレートがありますが、おおよそ以下の事柄を書くことは必須です。

  • 冒頭に「退職願」(退職届の場合は退職届)と記載
  • 1行あけて、一番下に「私議」もしくは「私事」と記載
  • 詳細は不要なため「一身上の都合により」と理由を記載
  • 提出日を記載(西暦、和暦は問わない)
  • 退職日時点での所属部署名を課まで詳細に書く
  • 自分の氏名および捺印
  • 会社名を正式に記載
  • 宛名は社長名をフルネームで記載 ※上司の名前を書かないよう注意

概ねどの転職願、転職届のテンプレートを参考にしても上記は記入できるような体裁になっています。
分からない場合や不安な場合は直属の上司に相談するようにしましょう。

円満退職マニュアル3:退職時のチェック項目

いざ退職の意思が明確になったら、転職にばかり意識が行きがちです。退職時に迷惑をかけないよう、以下のチェックリストを参考にし、円満退職を実現させましょう。

  • 退職意思表示
  • 業務の引継ぎ
  • 取引先などお客様の引継ぎ
  • 退職日の決定
  • 身辺整理
  • 社内への挨拶
  • 受理品、返却品の管理(後述)

会社を辞めるとなると、これだけの物事を動かす必要があるという点は、今後、自分自身が人の上に立つ管理者になったときのために覚えておきましょう。ここからは、会社から受け取るもの・会社に返却するものの2分類で解説していきます。

会社から受け取るもの

退職の際、会社から受け取る書類等があります。忘れずチェックしておきましょう。

□離職票
雇用保険の失業給付に必要な書類です。ただし、転職先が決まっている場合は不要な書類となります。

□雇用保険被保険者証(会社が保管している場合)
雇用保険の被保険者であることを証明する書類であり、転職先企業に提出するものです。転職先が決まっていない場合でも、雇用保険の失業給付手続きに必要な書類です。本来は入社時に交付されているものですが、紛失した場合はハローワークにて再発行可能です。

□年金手帳(会社が保管している場合)
厚生年金の加入者であることを証明する書類であり、転職先企業で提出が必要です。

□源泉徴収票
所得税の年末調整に使うための書類であり、転職先企業で提出が必要となります。
退職年内に就職しなかった場合は、所得税の確定申告時に使用します。

会社に返却するもの

日常的に使用している物だとうっかりいつもの癖で自宅に持って帰ってしまうかもしれませんが、退職時には会社に返却する物も多くあります。以下をご参照下さい。

□健康保険被保険者証(保険証)
健康保険は、退職と同時に無効となり、会社に返却する必要があります。

□社内身分証明書(社員証や名刺にカードキー、社章など含むすべて)
その会社の社員であることを証明する身分証明書はすべて返却します。
尚、注意すべきは「受け取った名刺」も会社内の情報ですので、会社に返却します。

□通勤定期券
原則として退職日までに精算し、返却します。

□社費で購入した文具や書籍
日常的に自分が使っていても、社費購入品は会社の所有物になるので返却します。

□その他書類やデータ
仮に自分が作成したものであっても、誤って業務上の機密を持ち帰るとトラブルになりかねません。業務に関わるものは、すべて返却します。

退職は転職にとっての必要事項!気を抜かずに取り組もう

転職と退職はセットで、退職せずに転職することは不可能です。トラブルの無い第一歩を踏み出すためや心残りが無いようするためにも、円満退職を前提として転職しましょう。最後の仕事の締めくくりとして、極力周りに迷惑をかけないよう真摯に退職手続きに取り組み円満退職を成功させましょう。

退職した後、社会保険や雇用保険などの不備、前職で担当していた業務の滞りなど問題が発生した場合、前の会社と連絡をとる場合があるかもしれません。

円満退職をしておけば、退職と転職が同時に上手くいき、新しい環境で余計な心配をすることなく、仕事に集中できるようになるでしょう。さあ、いい転職にするために、まずは「いい退職」からスタートする準備をはじめましょう。

ABOUT US
けんた
職業紹介会社(東証マザーズ上場)にて6年間勤務。WEBマーケティング職を経て、転職エージェントサービス立上げ、リサーチャー、キャリアアドバイザーなど多くの職種を経験。転職経験も豊富な現会社役員。