同業他社への転職は裏切り?競業避止義務の勘違いとリスク増大NG行為

同業他社への転職は裏切りなのか

同業他社へ転職するのは『裏切り行為だ!』という主張について、多くの社会人が、社内外で耳にした経験はあるとことおもいます。そんな人達の中には、自身や友人が、退職の際に「酷い嫌がらせをうけた人」や「協業防止義務をちらつかされ脅された人」の実体験を聞いた経験をお持ちの方もいるでしょう。

では、実際に同業他社へ転職することは、本当に裏切り行為なのでしょうか。また、訴えられるリスクや、バレたら問題になるなどの噂は本当なのでしょうか。今回は、勘違いによるリスク増大を未然に防げぐための知識、円満退社するためのノウハウを徹底的に解説していきます。

同業他社への転職とは?

同業他社であっても転職上の法的な制限はありません。日本では憲法で職業選択の自由が保障されているため、どのような職業を選択するのも個人の自由なのです。

しかし、企業としては自社の技術やノウハウ、重要な機密情報が元社員によって流出し、同業他社に利用されては不利益を被ってしまいます。そのため、多くの企業は契約書の形で、競業避止義務について社員の同意を得ているはずです。

また、同業他社への転職の場合、法的には問題はなくても、モラルを問われたり嫌がらせに遭ったりするようなケースもあるでしょう。さらに、自己の信用を失墜させるリスクについても注意しなければなりません。

そこで、同業他社への円満な転職を成功させるためにあらかじめ知っておきたい、①法律上の規定/②リスク/③メリット/④注意点などをまとめました。

同業他社への転職リスクについて

同業他社に転職しようとすると、それまで勤務していた会社から裏切り者呼ばわりされるリスクがあります。それが正当かどうかはさておき、同業他社への転職では裏切り者の汚名を着るリスクを覚悟するべきでしょう。

また、単に裏切り行為とみなされるだけでなく、会社によっては、転職を妨害する具体的な行動に出る可能性も考えられます。実際、同業他社に転職すると伝えたところ、経営陣が激怒して年金手帳の返却を拒まれた、などという話もあるぐらいです。

同業他社への転職は「裏切り行為」なの?

経営者としては、社員が同業他社に転職することが面白いはずがありません。せっかく苦労して自社ならではの仕組みや文化を築いてきたのに、同じ事業を営むライバル会社に転職されてしまっては、自分が否定されてしまったかのように感じられても仕方ないでしょう。

この意味では、同業他社への転職は確かに裏切り行為とみなされます。ただし、それは経営陣にとってのことであって、雇われている一般社員にとってはそうではありません。自分を最も高く評価してくれるところで働きたいと考えるのは当然です。

同業他社への転職がバレたら一大事なの?

経営陣からは裏切り行為と思われても、同業種だろうが異業種だろうが、働きたい会社に転職できることは憲法で保障された国民の権利です。したがって、経営陣に転職のことがバレて激怒されたとしても、それで一巻の終わりとなるようなNG行為とは言えません。

会社の意向がどうあれ、個人の意志が尊重されるべきことですし、たとえ妨害行為に遭ったとしても、裁判で争えば労働者の言い分が通るケースがほとんどでしょう。感情的なしこりが残ることは否定できませんが、同業他社への転職は認められるべき行為なのです。

競業避止義務をおさらい

競業避止義務とは、在職中に兼業を行ったり、退職して競業行為をしてはならないという従業員が守るべき義務のことです。多くの会社において、従業員の入社時に、誓約書や契約書の形でこの義務を負うことに同意させています。こうすることで、従業員に自社の情報を持ち出されたり、競合となる事業を始められたりして会社が損害を受けるのを防ごうという狙いです。

上で述べた「情報」とは、社内の人間しか知ることのできない機密情報のことです。誰もが調べてすぐわかるような情報のことではありません。会社独自の技術やノウハウがこれに当たり、それが流出すると会社が損害を負う危険性が高いようなものです。そのため、機密情報を扱うことの多い役職に課されることが多い義務と言えるでしょう。

おさらい1:法律ではどうなってるか

競業避止義務に違反すると、退職金の返還や損害賠償を求められることがあります。会社によって処罰の内容はさまざまですが、このような処罰を設けてまで会社は自社の不利益となるような競業行為を禁止しようとしているのです。

しかし、競業避止義務という法律があるわけではなく、たとえ在職時に契約書として従業員の同意を取り付けたとしても、退職後の行動までを広く制限できるわけではありません。同業他社への転職を認めないことは職業選択の自由を犯すことにもなりかねず、競業避止義務の有効性が裁判で争われることもあります。

しかし、競業避止義務とは別に、守秘義務に違反するような行為は不正競争防止法によって処罰される可能性はあります。とはいえ、守秘義務に該当する要件は限定されており、書類やデータなどの持ち出しはNGですが、個人の知識やスキルまでは該当しません。

ただし、たとえ法律では罰せられないとしても、モラルを問われるリスクがあることは心得ておくべきでしょう。

おさらい2:社内規定について

会社が競業避止義務を従業員に求めるのは、自社の利益を不当に侵害されないためです。たとえば、自社の従業員が雇用上にある地位を利用して、私的に競合行為を行うと、会社にとっては損害を被るリスクがあります

そのため、一般的に多くの企業では社内規定を設け、競業避止の義務を負うことについて従業員の同意を取り付けるのです。それに違反すると、会社によって内容は異なるものの、何らかの罰則が科されます。

おさらい3:もちろん在職中は義務がある

競業避止義務は法律ではなく、あくまで会社と従業員の間の取り決めです。しかし、法律で罰せられないとしても、在職中はコンプライアンスを遵守しなければなりません。会社の利益を不当に侵害するような行為は当然NGです。

おさらい4:退職時のサインは義務なのか、リスクについて

問題は、退職後まで競業避止義務を負う必要があるのかということです。会社によっては退職後も競合行為を行わないように、退職時に契約書・誓約書等にサインを求められることもあるでしょう。

しかし、会社は、労働契約解除後の従業員の行動に干渉することはできません。同業他社への転職を制限することもできないため、誓約できない時はきっぱり署名を断ることです。すでにサインしてしまった場合も修正可能です。勇気がいる行為ですが、誓約書へのサインを依頼された時は拒否してかまいません。

同業他社への転職で訴えられるリスク

競業避止義務があるといっても労働者には職業選択の自由があるため、競合他社への転職であれ、会社側にそれを止める権利はありません。しかし、機密情報を扱うような役職者だと、場合によっては辞めた会社に訴えられることもあります

以下、訴えられるリスクが高い「高」、中くらいの「中」、リスクが低めである「低」の三段階に分けて紹介していきます。

リスク「高」:役職者による情報の持ち出し

退職後に訴えられるリスクが高いのは、守秘義務に違反する行為を行った時です。たとえば、前職の職務上の地位を生かして入手することができた、その会社の顧客情報や独自の技術、ノウハウ等を社外に持ち出した場合、競業避止義務に反する以前に法律で処罰される可能性が高いでしょう。

競業避止義務として訴えられたとしても、その内容が法的に有効とされる範囲は限定的です。

しかし、役職が高ければ会社の機密情報を扱う機会も多くなるため、それらの情報を持ち出して競合他社に転職した場合、会社の訴えが認められる可能性が高くなります。そうなると、損害賠償の請求、退職金の返還、競業行為の停止等を命じられることもあるでしょう。高い役職にある人ほど注意が必要です。

リスク「中」:礼を失した辞め方

就労規則は社内の規定であるため、その内容に反したからといって法律で処罰されることはありません。競業避止義務に違反したとしても、その法的な有効性が認められるケースは役職者のように限定的な範囲でしょう。だからといって、社内規定を無視してよいわけではありません。

たとえば、民法上は14日前までに退職の意思表示をすればよいことになっていますが、社内規定で1か月前までとなっているのに、それを無視して直前に退職を申し出て、同業他社に転職するとわかったらどうなるでしょうか。非常に礼を失した行為と受け止められることは確実です。

訴えられるリスクを減らすのであれば、辞め方のプロセスに注意してください。同じ辞めるにしても、感謝の気持ちを丁寧に伝え、その人の誠意が感じられるような辞め方をするべきでしょう。

リスク「低」:裏切りとみなされる行為

大きく考えれば競合になるとしても、転職先の会社が直接競合ではない場合、そのことによって競業避止義務の違反だと訴えられるリスクは低いです。また、非管理職や役職に就いていない一般社員の場合、直接的な競合他社への転職であっても、よほどのことでない限り訴えられるまでには至らないでしょう。

情報の持ち出しであっても、書類やデータなど直接的な機密情報ではなく、たとえばその会社に在籍時に培った知識やスキル、仕事の進め方等であれば、訴えるに足るだけの証拠にはなりません。

ただし、この場合でも問題は辞め方です。これまでお世話になった人々に対する感謝もなく、いきなり同業他社に転職されては、裏切り行為と捉えられても仕方ないでしょう。場合によっては訴えられることもあります。

同業他社(競合)へ転職することを伝えない選択

たとえ訴えられるまでには至らないとしても、同業他社への転職は会社に対する裏切り行為とみなされる可能性は否定できません。裏切り者と思われては同じ業界では働きにくいです。では、同業他社への転職だと伝えずに辞めるという選択はどうなのでしょうか

勤務先に内緒で同業他社へ転職するのはあり?

前提として、会社を退職すること自体は、社内規定に則って定められた期間中(たとえば1か月前までなど)に上司に伝えましょう。民法では14日前までに伝えれば問題ないとはいっても、必要もないのにあえて社内規定を無視するのは得策ではありません。同業他社への転職が決まったら、なるべく早く退職の意向を直属の上司に伝えてください

この際、転職先の社名や具体的な業種まで伝える必要はありません。同業他社への転職とわかったら、上司から反対される、もしくは経営陣に妨害される恐れがある場合はなおさらです。これまでお世話になったことの感謝を誠心誠意伝えれば、事情の如何にかかわらず円満退職できる可能性は高いでしょう。

同業他社へ転職したことがバレるパターン

会社を辞める際に、同業他社への転職だと伝える義務は無いことをお伝えしました。転職先などの情報は個人情報にかかわることです。しかし、自分で伝えなくても、周囲の人たちから同業他社へ転職したことがバレるパターンもいくつか考えられます。

下記、よくある3つのパターンについて解説します。

バレるパターン1:同業者からのリーク

通常の退職手続きを経て退職した場合、辞めた会社にその後の転職先が伝わることはあり得ません。新しい会社で社会保険上の手続きが必要になっても、個人情報の管理が厳しい現在、以前在籍していた会社に問い合わされるようなことはなくなっています。

しかし、同業者からのリークによって伝わるパターンは意外と多いことに注意してください。業種によっては非常に狭い世界であるため、誰がどこの会社に転職したのかといった情報はすぐに伝わります。

バレるパターン2:元同僚からのポロリ

元同僚がうっかり口を滑らせて、同業他社への転職がバレるというパターンも多いです。会社を退職することが決まったら、円満退職の場合はなおさらですが、送別会を開いてもらえるでしょう。お酒も入るその席で、うっかり同僚に転職先のことを話してしまい、そこから社内中に伝わってしまうということがあります。

たとえ信頼している同僚であっても、転職先を秘密にしておきたいのであれば話さないに越したことはありません。

バレるパターン3:お客さんからの報告

同業他社への転職では、転職先の会社と以前の会社のお客さんがかぶることはよくあります。顔見知りのお客さんであれば、会った時に「転職したんですよ」などと話さざるを得ないでしょう。そのお客さんが前の会社に行った時に、「そういえば〇〇さんと会いましたよ。××社に転職したんですってね。」のように伝わることが考えられます。

その人に他意はなくても、「絶対秘密にしておいてください」とでも頼まない限り、世間話か何かのついでに伝わってしまうことはあり得ることです。

想定しておくべき嫌がらせ行為

決して多くの会社が行うことではありませんが、辞め方がよくない場合、転職後に『前の会社から嫌がらせ行為を受ける』こともあり得ます。嫌な思いをしないため、想定される嫌がらせ行為と、その対策を確認しながら自分に置き換えて考えておきましょう。

嫌がらせ行為1:裏切り行為だという怒りの連絡が連日くる

同業他社へ転職することについて、古い世代のなかにはいまだに自社に対する裏切り行為と捉える人がいます。なぜなら、これまで長らく終身雇用の社会だったため、いまだに生涯一つの会社に忠誠を誓うという働き方しか認められない人がいるからです。

もし、そういう考えの人が経営者や上司にいる場合、同業他社へ転職した人を裏切り者のように扱う恐れがあります。連日のように「裏切り者!」という電話がかかってくるような、直接的な行動に出られるケースもあるぐらいです。

嫌がらせ行為2:業界内等であらぬ噂を流される

狭い業界の場合、横のつながりがあるため、ある会社の情報がまたたく間に業界内に伝わることがあります。同業他社への転職者を裏切り者と考える人たちがいる会社の場合、故意に転職した人の良からぬ噂を流すということもあり得ることです。

たとえば、「あいつは会社の金を横領して会社にいられなくなった」などという根も葉もない噂を流されるようなこともあります。そこまでではなくても、あらぬ噂が広まることは想定しておかなければなりません。

嫌がらせ行為3:転職先に対し「訴訟」をちらつかせる連絡が入る

同業他社への転職で最も心配なのが、競業避止義務違反を理由に前の会社から訴訟を起こされることではないでしょうか。先に見たとおり、実際に訴訟を起こされ、しかも、会社側に法的な有効性が認められるケースはあまりありませんが、やはり訴訟となると多くの人は尻込みしてしまいます。

それを盾に取って、転職先の会社にまで「競業避止義務違反で訴えるぞ!」との連絡を入れてくるような会社があることも想定しておかなければなりません。

嫌がらせ行為を受けたらどうすべきか

もし同業他社への転職を理由に嫌がらせ行為を受けた時は、それが根拠のない悪質な嫌がらせであれば、断固たる対応を取らなければなりません。たとえば「横領で辞めた」など真実と異なる噂を流された場合、名誉毀損で訴えることも検討するべきでしょう。

もちろん前職での地位を利用して知り得た機密情報を漏らすような行為はご法度ですから、その場合に、自分が責任を問われるのは当然です。しかし、そうでない場合は、泣き寝入りするのではなく、弁護士に相談するなど対応を講じるべきでしょう。

こんな嘘は絶対NG「信用失墜の愚行」

同業他社へ転職するとしても、そのことを正直に伝える必要はありません。しかし、何らかの退職理由を述べる必要がある場合もあるでしょう。だからといって、嘘はNGです。場合によっては自分の信用を著しく失墜させてしまいます。

下記、代表的な嘘つき行為5選について、NGである理由を解説していきます。

NGな嘘1:周囲に嘘の転職先情報を流す行為

同業他社へ転職することを後ろめたく感じ、転職する会社について本当のことを言いたくないこともあるでしょう。しかし、たとえ裏切り行為と捉えられても、同業他社への転職は違法行為ではなく、職業選択の自由として労働者に保障されている当然の権利です。ですので、一時的に怒りを買うとしても、堂々と理由を述べて転職するのが最善でしょう。

もし、自分の保身のために嘘の転職先情報を流すようなことをすると、さらなる怒りを買い、自分の信用を失墜させてしまうだけです。

NGな嘘2:嘘の退職時期を伝える行為

一時の保身のために、嘘の退職時期を伝えてその場しのぎをしようとするのはまったくの愚行です。退職する理由は言い逃れできたとしても、退職する時期について嘘を突き通すことはできません。「3か月後に退職したい」などと嘘をついて、2週間後にいなくなるようなことはやめましょう。

上司ではなく、「同僚には多少嘘をついてもいいだろう」と考えるのも早計です。同じ業界なら、「あいつは嘘をついて会社を辞めた」という情報がいずれ広まります。

NGな嘘3:嘘の退職理由を伝える行為

退職時期と異なり、退職理由に関してはすべて本当のことを述べなくても大丈夫です。しかし、あからさまな嘘はやめましょう。

同業他社へ転職するということは、今後も元同僚と出くわす可能性が高いということです。「親の介護のために地元に帰る」などと嘘をついて退職し、同業他社で働いているのが見つかったら、やはり嘘つきという悪評が広まってしまいます。具体的な社名まで伝える必要はないですが、転職のために退職するということは正直に伝えるべきでしょう。

NGな嘘4:守秘義務を無視して情報漏洩する行為

守秘義務を無視して情報漏洩する行為は、絶対にNGです。自分の信用を失墜させるだけでなく、たとえば公務員なら刑事罰を科されるほど悪質とみなされる行為です。前職で知り得た情報や技術を使って、競合他社の利益となるような行為をすると、場合によっては莫大な損害賠償を請求されるリスクもあります。

ただし、ここでいう情報とは、誰でも調べてすぐわかるような情報のことではなく、職務上の地位を利用して得られる情報であることに注意してください。仕事を通して得た知識やスキルは転職先で活用してかまいません。

NGな嘘5:話せばわかる相手に退職代行を使う行為

ここ数年、退職代行サービスのニーズが高まっています。その理由は、「退職したくても会社が退職させてくれない」というケースが増えているからです。

同業他社へ転職すると伝えると、嫌がらせや脅しなどの直接的な行為に出てまで転職させまいとする会社があります。そういう場合に、自分の代わりに退職手続きを行ってくれるのがこのサービスです。

ですので、誠実に理由を伝えれば理解してくれる相手の場合、やはり自分の口から退職理由を述べるべきでしょう。「なんとなく気まずいから」というだけで退職代行サービスを使うと、信用を失いかねません。

同業他社への転職を円満にするためのポイント

転職が一般的になってきた現在の日本社会ですが、いまだに同業他社への転職は裏切り行為とみなされることもあります。では、どのようにして現職を円満に退職し、同業他社にスムーズに転職できるのでしょうか。

円満退社のポイント1:退職を伝える前からの準備

円満に退職するには、事前の準備が大切です。

最も注意すべきは、自分の退職によって会社に迷惑をかけないことです。実際に退職するまでは、退職の意向を上司に伝えてからもいくつかの行程があり、さまざまな調整事項も発生します。「どうせ退職するから」といい加減にせず、給与をその会社からいただいている間は、自分も一員であるという自覚を忘れないようにしてください。そうすれば、会社に迷惑をかけないための退職までのスケジュールが自ずと見えてきます。

円満退社のポイント2:退職を伝える時期と相手

退職の意思は直属の上司に伝えます。同業他社への転職は気まずいからといって、メールなどで伝えるのはNGです。もちろん退職代行サービスも、やむを得ない場合以外は使わないことをおすすめします。退職の意向はちゃんと自分の口で伝えましょう。

その時期ですが、会社ごとに就業規則で定められていることが多いので確認してください。民法では2週間前までならよいことになっていますが、退職には社会保険や年金などの手続きも伴うため、会社の定める時期に従うのが賢明です。

円満退社のポイント3:丁寧で誠意ある引き継ぎ

退職日までに後任者に業務の引き継ぎを行わなければなりません。まず、丁寧かつ誠意ある態度は前提です。後任者の負担にならないよう、無理のないスケジュールを組み、必要なことはノートにまとめるなどして引き渡すとよいでしょう。

円満退社のポイント4:感謝している姿勢は必須

より良い給料と待遇の会社に転職するとしても、これまでお世話になってきた上司、同僚、会社には誠心誠意、感謝の姿勢を示すことが大切です。それがなければ、いくらスムーズに業務の引き継ぎができたとしても、「この会社を裏切って出ていった人」という良くない印象が残ってしまいます。

円満退社のポイント5:最終出社日

最終出社日には、最後に自部署を始めとした関連部署に挨拶回りをします。その際も、ここまで述べてきたように、これまでお世話になったことの感謝をしっかり態度で示すことが大切です。最終日には精算や手続きがあるので、早めに出勤するような配慮にも気をつけましょう。

ななか編集員

円満退社(円満退職)について、更に詳細な方法を解説している記事もありますので、退職日が近づいている方は、下記のリンクからチェックしてみてください。

円満退職

超絶な後悔をするリスクについて

同業他社への転職を考える場合、今の会社より給料や待遇などの条件がよいのが大きな理由ではないでしょうか。ただし、好条件につられて転職したものの、猛烈な後悔をしかねないようなケースもあることに注意が必要です。

後悔1:情報屋として利用されるケース

同業他社があなたを欲しがる理由は、あなたがこれまで勤めてきた会社の顧客データや技術情報、もしくは営業ノウハウなどを手に入れるためということはないでしょうか。もしそうであれば危険です。必要な情報さえ手に入れたら、もはやあなたは用済みとしてお払い箱になってしまいかねません。

こうなっては、機密情報が盗まれたと前の会社に訴えられたとしても、転職先の会社は守ってくれないでしょう。「その人が個人でやったことなので、当社とは関係ありません。」ということで、即解雇されて路頭に迷った挙げ句、多額の損害賠償金を背負い込むような最悪のシナリオも考えられるのです。好条件を餌に、会社の機密情報を持ち出せというような誘いには乗らないように注意してください。

後悔2:スキル目当ての採用に騙されるケース

「会社の機密情報を持ち出せ」というような、訴訟を起こされかねないリスクのある誘いではないとしても、転職希望の同業他社は、あなた個人を欲しているのではなく、単にあなたのスキルを求めているだけという可能性にも注意しましょう。

そうなると、あなたが自分のスキルを他の人に教えたら、後は不要になるだけです。その後は粗末な扱いに甘んじなければならなくなってしまいます。スキル目当ての採用に騙されないように注意してください。

後悔3:思っていた環境じゃ無かった

「実際に入社してみると、思っていた環境とは違っていた」というのは、転職でよく聞く失敗談です。同業他社への転職に限らないことですが、その転職によって本当に自分が実現したいことが実現できるのか、自分の能力を存分に生かせるのかを、今の会社を辞める前にじっくり考えなければなりません。また、「これなら前の会社の方がよかった」とならないように、転職先の内実までしっかり調べましょう。

同業他社に転職するメリット

同業他社への転職をする際に注意すべき点について解説してきましたが、ここでは、実際に転職活動をする際に享受することができる3つのメリットを紹介していきます。

同業他社に転職するメリット1:内定を獲得しやすい

同業他社へ転職する第一のメリットは、内定を獲得しやすいことです。会社としても同じ業界で経験を積んでいる人を採用した方が教育にかかるコストが削減できるため、未経験者よりも前向きに検討しやすいでしょう。

同業他社に転職するメリット2:即戦力として活躍しやすい

同業他社へ転職する第二のメリットは、これまでの仕事で得た知識やスキル、経験を転職先ですぐに生かせることです。言い換えれば、即戦力として活躍しやすいということで、すぐに結果を出せばそれに応じて高い評価を得やすいでしょう。

同業他社に転職するメリット3:キャリア形成に一貫性がつくれる

直接の競合他社ではなくても、同業種の会社に転職することで一貫したキャリアを構築できます。キャリア形成に一貫性があると、さらにこの先、転職の機会があった時に、同じ業界で採用されやすくなるのがメリットです。

同業他社に転職するデメリット

同業他社へ転職するメリットについて紹介しましたが、次は、デメリットを3つ紹介します。ここで紹介するデメリットは、主に、転職活動が完了して入社後に発生するデメリットです。ある意味で、これらは、事前注意事項ともいえるので、よくキャッチしておいてください。

同業他社に転職するデメリット1:希少性が薄く年収ダウンの可能性が高まる

「同業他社ならこれまでの経験やスキルが生かせるので年収も上がるはず」と思って転職したものの、結果はその反対になる可能性もあります。なぜなら、同業他社には自分と同じ経験やスキルを持つ人たちがいくらでもいるからです。希少性をアピールできないと年収アップは難しいでしょう。

同業他社に転職するデメリット2:期待ばかり大きくなり業務量増大しやすい

「同業他社ならこれまでの経験やスキルが生かせるので年収も上がるはず」と思って転職したものの、結果はその反対になる可能性もあります。なぜなら、同業他社には自分と同じ経験やスキルを持つ人たちがいくらでもいるからです。希少性をアピールできないと年収アップは難しいでしょう。

同業他社に転職するデメリット3:会社同士のトラブルに発展するリスクがある

狭い業界の場合、会社同士で「引き抜きをしない」などのルールを作っていることもあります。それなのに競合他社に転職した場合、個人レベルに留まらず、会社同士の大きなトラブルに見舞われることもあり得るでしょう。

リスク承知の裏技!「迂回しゴール」

同業他社へ転職するリスクについては、既に沢山の情報提供をして参りましたが、実は、これまで紹介してきたリスクを迂回して、希望の転職先へゴールする裏技があります。2つあるので紹介しますが、これらは、筆者が実際に目の当たりにした実例でもあります。

決して推奨する訳ではありませんが、現職の環境に酷く悩まされ、心身共に限界の読者様もいらっしゃるかと思いますので、選択肢としてご案内させていただきます。

その1)グループ会社配属にしてもらう方法

同業他社へ転職する場合、狭い業界であるほど裏切り行為と捉えられるリスクは高いです。だからといって、業界を変えるわけにもいかないでしょう。そういう場合の裏技として、直接競合しないグループ会社配属にしてもらうという手があります。

本社の事業が競合している場合でも、グループ会社の事業は関係ないということはよくあります。そこで、まずグループ会社に転職し、いずれ希望先に配属してもらうというルートを取ることで、前の会社からの反感を減らすことが可能です。

その2)異業種でのキャリアアップ期間を作る

同業他社に転職したい場合でも、嫌がらせや反感のリスクを減らすためにあえて異業種に転職するという方法もあります。

一見、遠回りに感じられますが、違う業界を経験することは決して無駄ではありません。同じ業界の経験しかない人材より、さまざまな業界で研鑽を積んだ経験豊富な人材の方が、どこの会社でも必要としてもらえるはずです。

ですので、最終的に希望の会社へ転職するとして、その前にキャリアアップ期間として異業種に転職することも検討してみてはいかがでしょうか。

切磋琢磨できる関係性が大切

同業他社への転職に、法的な問題はありません。日本国民には職業選択の自由が憲法によって保障されているため、ある会社を退職した後にどの会社に転職するかはまったくの自由です。

ただし、入社時に競業避止義務について取り決めを交わしている場合、その内容に抵触すると訴えられるリスクもあります。しかし、その場合でも、会社側の意見が認められるケースは少数です。場合によっては嫌がらせ行為を受けることもありますが、泣き寝入りする必要はありません。弁護士などの専門家に相談するなど、しかるべき策を講じましょう。

狭い業界の場合、現時点では競合していても、いつ会社同士が提携したり合併したりするかわかりません。そうなると、前の会社の上司や同僚と再開し、また一緒に仕事をしなければならなくなることもあるでしょう。そんな時に、よくない辞め方をしたために『感情的なしこり』が残っていると、今後の働き方にも大きな影響を及ぼします。

競合同士であっても、同じ業界で働く以上、お互い切磋琢磨しながら高め合えるような存在でいたいものです。そのためにも円満退職を実現できるよう、上記のポイントを参考にしてください。

同業他社への転職について「よくある質問」

すでに転職先が決まっている場合、退職を申し出る時に伝えるべき?

同業他社への内定が決まっている場合、それを快く思わない経営者は多いでしょう。しかし、信頼できる上司であれば、正直に伝えてもかまいません。上司とはいえ同じ雇用者ですから、裏切り行為とは取られないでしょう。

転職先を聞かれた場合は正直に答えるべき?

極力嘘は避けましょう。同業他社へ転職する場合、反感を恐れて答えたくない気持ちはわかりますが、同じ業界で仕事をする以上、嘘をついてもいずれはバレてしまいます。

転職先を応えたくない場合はどうすべき?

嘘はよくありませんが、答えたくないことは答えなくてもかまいません。質問に何も答えないのが難しい場合は、嘘にならない範囲で曖昧に答えるとよいでしょう。正直に社名まで答える必要はありません。

転職希望の会社の面接で志望理由を聞かれた時は?

同じ業界での転職の場合、新卒時と違って、給与や待遇などの条件面が決め手となることもあるでしょう。それならば、それを正直に伝えればよいです。無理に取り繕って前向きな理由を述べようとしても、面接官にはわかります。

退職代行サービスを利用してはいけない?

前述したとおり、やむを得ない場合を除き、退職代行サービスの利用はおすすめしません。自分の口から退職理由を述べる方が、たとえその時は反感を買うとしても、最終的にはよい結果となることが多いです。

前の会社のリークで転職先を解雇されたらどうすればいい?

原因は前の会社にある場合でも、解雇したのは転職先の会社ですから、争う相手は解雇を受けた今の会社です。そのリークが嘘なら訴訟や交渉を通じて明らかになるため、不当解雇を撤回してもらえるでしょう。

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F.Osamu外部編集員
中堅人材紹介会社の経営者。 既婚、子供2人、転職回数:5回、年収1,200万円、資格:なし。自己分析が腑に落ち、強みを発揮するコトに注力して道が拓けたタイプです。仕事以外では、適職発見同好会の立上げメンバーとして、転職者向けメディア「向いてる仕事.com」の運営を経験。転活ラボの外部編集員として活動中。