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退職後の住民税どうする?転職前に選べる3つの納付方法と滞納した場合

退職後の住民税滞納に注意

退職後、住民税の納付を忘れて、無意識に滞納してしまう人は少なくありません。理由はシンプルで、「在職中は会社が給与天引きしてくれていた」から、住民税や所得税といった税金の支払い知識がなかったというもの。

転職した後、次の会社に入社すると、人事から「前の会社を退職する際、住民税はどうすることになりましたか?」と質問されるので、社会人の常識としてスムーズな回答ができるのが理想といえます。地域社会の費用を負担するために支払うことが求められている「住民税」。

転職直後に、常識が無い人だと思われないために、今回は、住民税の納付方法として3つを紹介します。また、そもそも退職する場合に「住民税を支払う必要はあるか」という疑問にも答えます。退職後、住民税を滞納してしまった場合にどうなるのかについても解説しますので、社会人の基礎知識として転職前にご確認ください。

疑問!退職しても住民税は支払う?

転職などのために会社を退職した後も、住民税は支払う必要があるのでしょうか。まず、この疑問から考えてみましょう。

そもそも住民税とは、1月1日現在に住所のある市区町村に払う税金です。「市町村民税・特別区民税」と「道府県民税・都民税」という、自治体に支払う二つの地方税を総称して、住民税と呼んでいます。

例えば、東京都世田谷区にお住まいの人であれば、行政として「東京都」が提供するサービスも、「世田谷区」が提供するサービスも受けているので、その両方に税金を納める必要があるのです。

住民税は基本的に、一定以上の所得がある人が課税対象となっています。所得が低い人の生活を守るために、住民税の納付義務に関して、それぞれの自治体が一定のラインを決めています。

所得が一定額以下であれば住民税非課税世帯となり、住民税を支払う義務が無いのです。そのため、退職してまだ転職先が決まっておらず、給与がゼロになれば、課税の対象外となり支払う必要はないように思えるかもしれません。

しかし、知っておきたい点として、住民税がいくら徴収されるかは、昨年の年間所得をもとに決まります。

前年の1月1日から12月31日までの1年間分の所得を基準にして住民税が決定し、それを翌年6月から翌々年5月までの1年間で支払う、というシステムなのです。

このような後払いのシステムになっているため、退職して仮に収入が無くなったとしても、すぐに住民税の金額が変動することはありません。

前の年に働いていた時の所得を基準として、支払うべき金額がすでに計算されているのです。つまり、退職しても、支払うようにと決定された住民税の支払い義務は、解消するわけではありません。

過去1年間に一定の所得があったのであれば、住民税を支払う必要があります。住民税として支払うように決められた額を、きちんと納めるようにしましょう。

ちなみに、住民税は「均等割」と「所得割」という二つの要素から成り立っています。均等割とは、所得の多い少ないにかかわらず、すべての人に一律定額で課せられる税金です。

均等割は、その年によって変わることがありますが、「市町村民税・特別区民税」の標準税金は3,000円、「道府県民税・都民税」の標準税金は1,000円です。

さらに、「道府県民税・都民税」と「市町村民税・特別区民税」には、それぞれ復興特別税として、2023年まで各500円ずつ、合計1,000円が別途加算されます。

均等割が定額で課せられる一方、所得割はそれぞれの前年の所得に応じて課せられる税金です。所得割の税率は、お住まいの自治体によって異なりますが、ほとんどの場合都道府県税が4%、市町村税が6%で合計10%となっています。

この所得額がそれぞれの所得に応じて変動することで、全体の住民税も一人ひとり徴収額が異なっているのです。前年度の収入が多ければ、その分だけ納めなければならない住民税も高くなります。

これまで働いていた会社での収入が多く、転職や退職で収入が少なくなると住民税の負担が大きくなることが考えられますが、その場合でもきちんと住民税を支払えるように、よく計画しておきましょう。

方法は3つ!退職後の住民税納付

退職しても、決定した分の住民税については、引き続き支払う義務があることが分かりました。では、退職した後は、住民税はどのように支払えばよいのでしょうか。

住民税は3つの支払い方法があるので、一つずつ見ていきましょう。

①退職後の給与から一括で天引き

まず、給与から一括で天引きしてもらう、という方法があります。一括で天引きになるかどうかは、いつ退職するかによって決まります。

通常、1月から4月に退職する場合には、特に手続きをしなくても、住民税は自動的に一括で天引きされることになっています。

住民税は5月までが一区切りなので、退職月から5月までの住民税が、まとめて支払われるでしょう。もし、最後に支払われる給与が住民税の金額を下回っていた場合は、そのあと市区町村から送られてくる納税書を使って自分で支払う必要があります。

退職月が5月の場合も、特に手続きなどは必要ありません。最後の5月分のみの住民税が、自動的に最後の給与から徴収されます。

6月から12月に退職する場合は、一括で支払うかどうかを納税者の意思で選ぶことができます。一括払いにしない場合は、最後の給与から引かれるのは、退職する月分の住民税のみです。

それ以降の住民税は、退職したあとに市区町村から送られてくる納税書を使って、自分で支払うことになります。

残りの分を一括で最後の給与から天引きしてほしい場合は、住民税の残りをまとめて天引きにしてほしいと、退職する前に会社に希望を伝えてください。

給与から一括で天引きされるのであれば、住民税を滞納してしまう心配はありません。ただし、最後に受け取る給与や退職金から、まとまった金額の住民税が引かれることになります。

予想していたよりも、受け取る給与の額が少なくなってしまうこともあるので注意しましょう。

②普通徴収に切り替え

次に、住民税の支払い方法を普通徴収に切り替えて支払う、という方法についても見てみましょう。住民税の普通徴収とは、個人事業主や無職の人など、給与所得者以外の人を対象とした納付方法です。

これまで会社勤めをしていた人でも、退職していったん無職となれば給与から天引きできなくなるので、再就職するまでの間は普通徴収で住民税を納めなければならないこともあるでしょう。

この普通徴収の場合は、確定申告が行われたあとに、納税義務のある人にはそれぞれ税額通知書や納付書が送付されます。

その納付書を用いて、それぞれが役所や金融機関の窓口、コンビニエンスストアなどに出向いて、直接支払うというものです。口座から自動引き落としにしてもらうことも可能です。

一部の自治体では、クレジットカードによる納付も利用できるようになっています。

この普通徴収では、一年間に支払う住民税が4回に分けて徴収されます。まとめて一括支払いに変更することも可能です。

納期は6月・8月・10月・翌年1月の4回に分けるのが一般的ですが、自治体によって異なることもあります。いつ支払うのかについて詳しくは、お住まいの自治体に確認してみてください。

退職をして給与を受け取らなくなったため普通徴収に切り替える場合は、お住まいの市区町村に「給与所得者異動届書」を提出する必要があります。

この書類は退職した月の翌月10日までに提出しますが、お住まいの自治体によって提出日が異なることもあります。

書類の提出が遅れると手続きも遅れ、場合によっては住民税が滞納となってしまうこともあるので、なるべく早く手続きを済ませるようにしましょう。

普通徴収の場合、毎月給料から天引きされる場合と比べて、支払い回数が少なく一度の負担が大きくなりがちです。

まとまった金額でも遅れることなくきちんと納めることができるように、納期や金額を確認しておきましょう。

③特別徴収を継続

最後に、退職した後に就職する次の会社がすでに決まっている場合は、今後も特別徴収のままで住民税を納める方法もあります。

特別徴収とは、会社員など給与所得者が対象となっています。本人には税額の通知はなく、事業者がまとめて納税する支払方法です。

会社の給与支払担当者が毎月の給与から住民税を差し引いて、各市区町村に納めています。

この場合、住民税は毎月の給与から天引きとなり、一年間分の住民税が、6月から翌年の5月にかけて毎月均等に引き落としされます。

つまり、住民税を合計12回に分けて支払うというシステムです。通常、この天引きは自動的に継続されるので、個人的に何か手続きをする必要はありません。

しかし、会社を変わる場合は別です。転職先の会社で引き続き特別徴収を希望する場合は、所定の手続きを踏む必要があります。

これまで勤めていた会社もしくは転職先の会社に、住民税の引き落としを継続したい旨を伝えましょう。

この場合も、自治体に「給与所得者異動届書」を提出することになりますが、普通徴収とは流れが少し異なっています。

まず前の会社で書類に記入したあとにその書類を新しい会社に送付し、新しい会社が残りの項目を埋めたうえで自治体に提出するというところです。

このような手続きを取れば、転職先の会社でも引き続き特別徴収により、住民税を均等に毎月引き落としてもらえます。

特別徴収を継続するのであれば、支払いを忘れて滞納してしまうようなことは避けられるでしょう。

住民税を滞納してしまったらどうなる?

給料から天引きではなく、住民税を自分で支払う場合、納税書には納付期限が書かれています。

この納付期限をしっかり守り、遅れることなく納税することはとても大切です。では、忘れていたなどの理由で住民税を滞納してしまった場合には、どうなるのでしょうか。

住民税を納めていない場合は、納付期間が過ぎてから20日以内に督促状が郵送されます。督促状には、「あなたに課税した住民税が未納になっています。」と、住民税の未納を知らせる文面が記載されています。

さらに、「このまま放置されると、差押えなど法律にもとづく滞納処分を行います。」と書かれていることもあるでしょう。

うっかり納付を忘れていた場合、このような督促状を受け取ったならすぐに対応し、速やかに支払ってください。この督促状の発行日から10日以内に住民税を支払わないと、法律上、財産が差し押さえられてしまいます。

さらに、納付期間が過ぎると延滞金がプラスされてしまうというデメリットもあります。

延滞金は税額の14.6%で、最初の1ヶ月は4.3%です。延滞した日数に応じて延滞金が加算されるという計算方法なので、納付が遅れれば遅れるほど、ペナルティの金額は増えてしまいます。

決して安い金額ではないので、延滞しないように注意してください。

滞納のペナルティは、納税する金額の負担が大きくなるだけではありません。

住民税を滞納したままでいると、督促状や催告書が発行されるだけでなく、職員が家を訪問したり、自宅に電話がかかってきたりします。

催告がたびたび行われ、住民税を支払うように告げられるでしょう。何度も督促状が来ているのに無視したり、支払いの約束を破ったりしていると、財産調査が行われることもあります。

つまり、不動産や車など、金額の大きなものを所有していないか調査されるのです。滞納者の勤務先や、口座を持っている金融機関などに調査票が送付され、最悪の場合は給料や財産が差し押さえになってしまうこともあります。

そうなると、口座からお金を引き出すことができなくなるなど、生活に大きな影響が出てしまうでしょう。大切な持ち物を競売にかけられることもあるかもしれません。

そうした最悪の事態を避けるために、住民税は滞納することなく、きちんと期日までに支払うことを意識してください。

資金繰りなどの理由で支払いが遅れることがあるとしても、負担する金額はどんどん大きくなる一方で、一つもメリットはありません。

もし、何らかの理由で支払いが難しい場合には、督促状や催告を無視するのではなく、お住まいの自治体に一度相談してみましょう。経済的な理由などで納税が難しい人に向けて、猶予や減免などの救済措置が用意されているからです。

事前に準備をしておこう!

地域の福祉や教育、環境整備などさまざまな行政サービスのために使われる住民税。

これまで見てきた通り、住民税は前年度の年間所得をもとに決定し、翌年の1年間で支払うようになっています。

後払いシステムの税金なので、退職後には大きな負担となることもあるかもしれません。

しかし、納付が遅れれば滞納金が加算されてしまうので、期日までにきっちりと支払うことは大切です。

退職するときには、住民税を最後の給与で一括徴収してもらうのか自分で支払うのか、しっかり確認しておいてください。

金額や納付方法をよく調べて、住民税を滞納してしまうことがないように、事前にきちんと準備しておきましょう。

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